大判例

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広島高等裁判所 昭和44年(う)198号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕法令適用の誤の控訴趣意について。

所論は、原判決は、被告人が昭和四三年五月二七日岩国市今津町四丁目一の二二錦江アパート前広場において北野作男所有の普通乗用自動車一台外を窃取した窃盗罪と右自動車を無免許で運転した道路交通法違反の罪とを併合罪であるとするが、被告人が右自動車を無免許で運転するに及んだのは自動車窃取のためであり、自動車の窃取が既遂に達するためには自動車を場所的に移転し犯人の事実支配に移すことを要し、そのためには運転行為が不可欠であつて、右の窃取と無免許運転行為とは一個の行為で数個の罪名に触れる場合に該当し想像的競合と解すべきであるから、これを併合罪とした原判決には法令適用の誤があつて、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。

そこで考察するに、窃盗罪が既遂となるには他人の支配内にある財物をその他人の支配を排除して自己の支配内に移すことをもつて足りると解すべきところ、原判決が所論指摘の窃盗(原判決別表番号8)の証拠として挙示する<証拠略>によると、本件普通乗用自動車(山五ね六六五、カローラ一一〇〇CC)は、被害者北野作男がエンジンキーをはずし、その居住する原判示錦江アパート前広場に駐車しておいたもので、被告人は浴本達夫、原章夫と右自動車を窃取しようと共謀し、被告人がその運転席に乗り込み、他の二名が自動車の後ろから押して右自動車を前示広場から前の道路まで移動させたうえ、被告人がドライバーを用いエンジンスイッチの裏をはずし、配線を直結にしてセルフモーターを回転させてエンジシを始動させ本件自動車を発進させたことが認められ、被告人らが、右のように、本件自動車をその駐車場所から付近道路まで移動させたばかりでなく、エンジンを始動させ何時にても発進可能の状態におくという行為に出た以上、既に被害者の本件自動車に対する支配は排除され、被告人らの支配に移つたものということができるから、被告人らが更に進んで本件自動車を運転する行為をまつまでもなく窃盗罪の既遂になるものと解するのが相当である。したがつて所論指摘の無免許運転は本件自動車の窃盗が既遂に達した後の犯行であり、右窃盗および無免許運転の両者は一個の行為で数個の罪名に触れる場合に該当せず、右両者を併合罪の関係にあるとした原判決は正当であつて、所論のごとき法令適用の誤はない。論旨は理由がない。(高橋英明 浅野芳朗 一之瀬健)

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